大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)217号 判決

一 被告代表者は、適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、且つ答弁書その他の準備書面をも提出しないので、請求原因事実は、商標類否の判断に関する主張部分を除いて、これを自白したものとみなす。

二 そこで、審決を取消すべき事由の存否について判断する。

1 称呼の類否について

本件商標及び引用商標は各別紙記載のとおりのものであつて、本件商標からは「マリンバ」の称呼が、引用商標からは「マリンカ」の称呼が生ずることは明らかである。

(1) 原告は、「バ」の音と「カ」の音は、いずれも破音として調音の仕方を同じくする子音「b」、「k」と、同一母音「a」との綴音であるため、発声上自ら相似たものとならざるをえず、特許庁審査基準も、同数音の称呼からなり、相違する一音が母音を共通にするときは、原則として称呼上類似するものとすべきことを定めているから、「マリンバ」と「マリンカ」は称呼上類似するものとすべきである旨主張する。

しかしながら、原告の主張するように「b」と「k」の音がともに破音であつて調音の仕方を同じくするものであり、「バ」の音と「カ」の音は、この調音の仕方を同じくする「b」と「k」の音と、母音「a」の音とが結びついたものであつて、発声上似たものとならざるをえないものとしても、審決認定のとおり、「マリンバ」の末尾音の「バ」は、濁音であることにより聴者に比較的強く印象づけられ、「マリンバ」と「マリンカ」は、これが一連に称呼されるときは、その聴感を異にし、両者相紛れることはないものというべきである。特許庁審査基準が、原告の主張するように、同数音からなり、相違する一音が母音を共通にするときは、称呼上類似すべきものとすべきことを定めているとしても、それはあくまでも「原則として」のことであつて、必らず類似するものとすべきことを定めているものとすることはできないから、原告が右審査基準をその主張の根拠とすることは意味がない。

(2) 原告は、また、語尾音は、聴者の受ける印象が弱く、聞き逃されやすいものであるばかりでなく、今日の多種多様な商品の取引の実際においては、商標の称呼が殊更に一音一句強調して発音されてその異同を吟味されるようなことも全く期待しえない旨主張する。

しかしながら、語尾音が、常に聴者の受ける印象が弱く、聞き逃されやすいものであるとはいえず、簡易迅速を旨とする取引の実際においても、「マリンバ」と「マリンカ」の間に称呼上の混同が生ずるおそれはないものと認められるから、原告の主張は理由がない。

(3) 原告は、さらに、「バ」と「カ」の音は発声上似たものであること、語尾音は聴者の受ける印象が弱く、聞き逃されやすいものであることと、引用商標は、昭和四五年二月から果汁入り炭酸飲料に使用され、永年の使用により当業者間に周知せられるに至つていることとが相まつて、引用商標の指定商品が「マリンバ」の称呼によつて取引されるときは、「マリンカ」と誤認され、これと混同される旨主張する。

しかしながら、「マリンバ」と言えば「マリンカ」なる果汁入り炭酸飲料を想起せしめるほど引用商標が取引者間、消費者間で著名であると認めるに足りる証拠はないから、原告の主張は結局において理由がない。

2 観念の類否について

原告は、本件商標の指定商品の分野における取引者、需要者は「マリンバ」が楽器の一種であると直ちに観念して理解しうるものではないのに、審決が、そのように観念されうることを前提として、本件商標は引用商標と観念において類似しないとしたのは判断を誤つたものである旨主張する。

本件商標の指定商品の分野における取引者、需要者が本件商標に接して「マリンバ」が楽器の一種であると直ちに観念しうるものであるかどうかは別として、本件商標からは、楽器の一種である「マリンバ」の観念が生ずるものと認められるのに対し、引用商標は、特定の意味を有しない造語であつて、これからは何らの観念も生じないものと認められるから、本件商標と引用商標とは観念において比較することができないものというべきである。審決が、両者は観念においても比較できるものであることを前提として、両者は観念においても相違すると結論するかのごとき表現をしたのは、その措辞いささか適切を欠くきらいがあるけれども、その意とするところは、観念においては比較できないものとすることにあるものと認められ、したがつて、本件商標に接して、取引者、需要者が直ちに楽器の一種を観念しうるか否かということに関する原告の主張は結局において意味がない。

三 右のとおりであつて、本件商標と引用商標とは類似しないとした審決の判断に誤りはなく、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は理由がない。

〔編註その一〕 本件登録商標に関する事項は左のとおりである。

被告は、登録第一三七一一〇三号商標(別紙第一のとおり、「マリンバ」の片仮名文字を横書きして成り、第二九類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品として、昭和四六年五月二四日登録出願、昭和五四年二月二二日設定登録されたもの――以下「本件商標」という。)の商標権者であるところ、原告は、昭和五四年九月一〇日、被告を被請求人とし、登録第九八九一九三号商標(別紙第二のとおり、「マリンカ」の片仮名文字と「MARINCA」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、第二九類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品として、昭和四四年八月二一日登録出願、昭和四七年一一月一六日設定登録されたもの――以下「引用商標」という。)を引用して、本件商標と引用商標とは類似の商標であり、その指定商品は同じであるから、本件商標は商標法第四条第一項第一一号に該当することを理由に、本件商標登録を無効にすることについて審判を請求したところ、右事件は特許庁昭和五四年審判第一一〇〇一号事件として審理され、昭和五七年七月二七日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年九月一七日原告に送達された。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙第一

<省略>

別紙第二

<省略>

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